2006年10月07日

Jリーグからサンフへのペナルティは妥当か?

ベットが解雇になってしまいました。去年はあんなに活躍してくれたのに。

ベットの傷害事件とサンフの関係を書いたところ、KINDさんよりJリーグがサンフレッチェの監督責任を問うのはおかしいのではないか、と意見をいただきました。
この意見に対し、民法715条の使用者責任が処罰の理由たりえると考えていたのですが、自分自身でもしっくりこないのでその後も調べ続けてました。
調べた結果を忘れそうなので、またチラシの裏状態で書かせてもらいます。

■使用者責任ってなに?

クラブに過失があったかどうかという点について、民法715条の使用者責任を持ち出してみた。

第715条(使用者等の責任)

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

もし、Jリーグから処罰を受けクラブが抗議するのであれば、使用者(=クラブ)自身が過失がないことを証明しなければなりません。
これは使用者責任を問う場合に、被害者側の立証が困難であるという立場からきています。
これでいけるかとも思ったんですが、プライベートまで使用者責任を問われるかというと微妙です。

■プライベートで監督責任を取らされた事例

たとえば、野球部員が暴力事件を起こして高野連から対外試合の禁止の措置を取る場合はあります。サッカーでも東海大五高の部員が強制わいせつで逮捕され、3週間の対外試合禁止と、監督に対する10日間の謹慎処分が出てるし。
学校の場合は生徒の生活指導までが部活動にも組み込まれてるわけで、それを怠った学校に対し処分があるのは納得できます。高野連の場合は、実際に処分する規定があります。
http://www.jhbf.or.jp/rule/charter/index.htmlからの引用。

第二十条 日本学生野球協会は、部長、監督、コーチ、選手又は部員に学生野球の本義に違背し、又は違背するおそれのある行為があると認めるときは、審査室の議を経て、その部長、監督、コーチ、選手又は部員に対しては、警告、謹慎又は出場禁止の処置をし、その者の所属する野球部に対しては、警告、謹慎、出場禁止又は除名の処置をすることができる。部長、監督、コーチ、選手又は部員にこの憲章の条規に反する行為があると認められるときも、同様である。
(2) その部長、監督、コーチ、選手又は部員について前項前段の規定を準用する。但し、この非行が、学生野球の健全な発達を阻害し、又は阻害する おそれがあると認められるときは、その者の所属する野球部についても前項前段の規定を準用する。
(3) 部長、監督、コーチ、選手又は部員の野球に関しない個人としての非行であつても、その非行が、学生野球の健全な発達を阻害し、又は阻害するおそれがあると認められるときは、その者の所属する野球部について第一項前段の規定を準用する。
(4) 学校法人の役員、若しくは、教職員、其他学校関係者の行為が、学生野球の健全な発達を阻害し、又は阻害するおそれがあると認められるときは、その者の関係し、又は関係せんとする野球部について、第一項前段の規定を準用する。

プライベートな暴力事件でも(1)と(3)の合わせ技でいけるわけです。
しかし筆者の調べた狭い範囲では、JFAにもJリーグにもこれに類する規定はないんですね。いいのか、JFA。

そういう意味でやっぱりサンフが監督責任を問われるかは微妙です。

■他のスポーツでも責任をとってるじゃないか

確かに、他のスポーツでも個人の不祥事に対し、監督責任を取る事例はあります。しかし自主的な処分が大半であり、上位者から処罰を受けてる事例はほとんどありません。たとえば極楽とんぼの山本氏が事件を起こした際に、欽ちゃん球団ことゴールデンゴールズが解散すると言ってましたが、実際は解散もしていなければ対外試合の禁止もしていません(間違いだったらごめんなさい)。また、山本氏の雇用主である吉本興業も解雇しただけで、上司は責任をとっていないようです。

どうも世間一般ではプライベートで不法行為をした場合、「法的には責任はないが、道義的には責任がある」と、なかばリンチのような理屈を持ち出して上司を攻めてます。ムカつく理屈ですね。

さすがに公務員はここまでやりたい放題ではなく、上司が作為義務を怠ったとして管理責任を取らせてます。とはいっても、この場合の作為義務は部下に「信用失墜行為の禁止」を守らせることなのかという疑問はありますが。

■ケーススタディ:ウエイトリフティングのコーチが監督責任を争った事例

実際に監督責任を争った事例として、ウエイトリフティングの女子部のコーチが男子部の大麻不法所持の責任を取らされた事例があり、これはコーチがJSAA(日本スポーツ仲裁機構)に訴えています
そのときも監督不行届きが争点の一つになっていますが、判断の理由では非常に微妙な表現を用いており、サンフの事例には適用できそうにありません。
この事例の中で注目すべき点はスポーツ仲裁機構は、協会に対しある程度の裁量権を認めています。つまり、協会の自治の一環として、協会によるペナルティを認めているわけです。

■結論:Jリーグからのペナルティは問題なし

Jリーグはクラブの上位に位置する団体なわけで、Jリーグ内部での自治を認められてると考えられます。そこで、サンフがプライベートまではクラブの面倒見るところじゃない(=クラブに過失はない)と主張しても、クラブに過失があったと認定するのは裁量権の範囲だとJリーグは主張するわけです。これであれば、裁判所も文句をつけるのは難しいでしょう。
ただ、裁量権を持ち出すということは、裁量原則を守らなければなりません。

1)事実誤認
2)目的違反・不正な動機・他事考慮
3)平等原則
4)比例原則

詳しくはこのへんを見てください。
ちょっと書くのに疲れたので、今日はここまでにしておきます。


posted by まる at 01:29| Comment(2) | TrackBack(0) | サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どうもです。まるさんの「徹底的に調べる」という熱意と誠意に、最大限の敬意を評します。とりあえずは、Jリーグの判断待ちですね。
Posted by KIND at 2006年10月07日 01:57
KINDさん、コメントありがとうございます。
そうですね。今後はJリーグの判断待ちになると思います。
過去の類例と比較すると重い処分となったので、譴責になると思います。
Posted by まる at 2006年10月07日 23:10
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